風間神社由緒
風間神社の御祭神は、主祭神に級長津彦命、相殿の左に事代主命、相殿の右に倉稲魂命。御神号は風間大明神、諏訪大明神、稲荷大明神。
裾花川は流域面積が少ないため、暴れ川と呼ばれるほど氾濫が多く、人々を悩ませていました。村人たちは裾花川の流れを治め、豊かな恵みを願い、田畑を開墾し風雨順時を祈念し、お社を祀られたと言われています。平安時代の延喜式神名帳には、水内郡の一座として記載されています。
鎌倉幕府の執権北条氏のとき、諏訪社大祝職である諏訪盛重は北条泰時、経時、時頼の三代の執権に仕えます。以後、北条得宗家との絆は一段と強くなり、全国に諏訪神社を拡大していきます。風間郷には、矢崎家直の子息が風間忠直を名乗り「風間神社」から「諏訪大明神」に改めたと伝えられています。
伊勢宮は、現在の風間神社より西南の地にありましたが、社寺領上知令により今の境内にお祀りするようになりました。また、今は風間神社の境内東にある猿田彦社と天満宮は、藤興寺の西にありましたが、太平洋戦争で長野飛行場拡張の時に現在の場所に移りました。
風間神社 神事祭禮傳紀全（宝暦九年 1759年）
風間神社御祭神
級長津彦命（しなつひこのみこと）
伊弉諾尊（いざなぎのみこと）の御子神で、日本書紀では、伊奘諾尊が立ち込める朝霧に自らの息を吹きかけて、霧を吹き払った時に生まれたとされています。農業と関わりが深く、雨と風を司る神様です。稲などの農作物が無事に生育するようにとの祈りが捧げられてきました。
事代主命（ことしろぬしのみこと)
大国主神（おおくにぬしのかみ）の第一の御子神。鯛を手にする福徳円満の神『えびす様』として世に知られ篤く信仰されています。また、出雲神話の国譲りにおいて、大国主神より大変重要な判断を委ねられた尊い神様です。
倉稲魂命（うかのみたまのみこと）
倉稲魂命は、『お稲荷さん』の名で親しまれていて、商工業の神、農業の神として信仰されている神様です。名前に稲とつくことから、五穀（米、麦、粟、キビ、豆）などの食べ物を司る穀物神であったと言われています。
風間神社境内社
伊勢宮（いせみや）
お伊勢さんと親しく呼ばれる伊勢神宮は、正式には「神宮」といいます。祭神の豊受大御神（とようけのおおみかみ）は内宮の天照大御神のお食事を司る神様で、衣食住、産業の守り神としても崇敬されています。
猿田彦社（さるたひこしゃ）
祭神の猿田彦命は、古事記、日本書紀の神話に登場する神様で、ニニギノミコトが高千穂の峯に天孫降臨をなさった際、その先導役をされた神で、その故事により水先案内の神、そして交通安全の神として信仰されています。
天満宮（てんまんぐう）
菅原道真公をお祀りしています。江戸時代には、各地に読み書き算盤を教える寺子屋が普及し、その教室に道真公のお姿を描いた御神影が掲げられて、学業成就や武芸上達が祈られてきました。このことが後に学問の神さま、芸能の神さまとして広く知られるようになりました。
天牟羅雲社（あめのむらくもしゃ）
祭神の天牟羅雲命は、水を司る神様で、天孫降臨の舞台になった高千穂峡に「天真名井の滝」を顕現させました。そしてこの水を丹波の「天の真名井」にお遷しになった後、伊勢外宮の「御井」にお遷しになったと伝えられています。水の神様、井戸の神様として崇敬されています。
左が猿田彦社 右が天満宮
風間神社太々神楽獅子舞
風間神社太々神楽獅子舞は、川中島の戦いが終わって、善光寺平が少し平穏になった頃、信濃を訪れた伊勢神宮外宮の御師から伝えられた獅子舞と言われています。
御師とは、全国各地を回ってご祈祷の神宮大麻の頒布、参宮時の宿泊、神楽奉納など、伊勢旅行の案内から道中の旅館の手配まで、きめ細かに世話をしていました。伊勢信仰の信者が増え村落ぐるみで信者になることもありました。信者は“伊勢講”を組織し、交代で伊勢参りに出かけるようになります。
江戸時代になると、伊勢神宮へ参拝する人々が増加するのと並行して、御師一行が伊勢から各地へ出張する獅子舞の巡回も盛んになりました。御師一行による獅子舞を受けることで、伊勢神宮を参拝し、神楽奉納をしたのと同じご利益を得ることが出来ると信じられていました。
御師一行は、伊勢神宮の御神徳を広めるために獅子舞を見せ、この土地の安泰と繁栄を願ったそうです。この獅子舞に感激した宮崎神主を中心に、地域の有志が御師一行から習ったのが始まりとされ、その後仲間で練習を続け、現在の獅子舞の形になったと伝えられています。
神楽が始まった時期は、永正年間（1504〜1521年）伊勢国度会郡山田郷が飢饉に見舞われ、しかも悪疫が流行したので、これを払うため獅子頭を産土神として祭り、家々をめぐって獅子を舞ったのが最初と言われています。
風間神社太々神楽獅子舞は、文政五年（1822年）には伝承され、文久二年（1862年）の古文書に、太々御神楽式の記述を見ることができます。それから幾世代を通じて、風間地区に伝承されてきた獅子舞です。風間神社太々神楽獅子舞は平成10年8月1日、長野市より選択無形民俗文化財に指定されました。
太々御神楽式次第
風間神社の雑学
風間神社の神主だから、苗字を「風間氏」と思っている方が多いのですが、実は、外宮の東隣りに豊宮崎（今の伊勢市岡本）という地名があります。豊宮崎とは豊受宮の尾崎の意味で、外宮神域の尾崎（山の端）に当たることから宮崎と言われました。ここから『宮崎氏』の名前を頂くことになりました。
風間神社は江戸時代後期「信州水内郡柳原庄芋井郡風間村」と表記していました。明治22年の町村制法施行により大豆島に編入し「上水内郡大豆島村大字風間字宮河原」となり、昭和29年の昭和の大合併で長野市に編入し「長野市風間781番地」になりました。
伊勢国風土記逸文に、国譲りした伊勢津彦が「逃れて信濃に往来けりといふ」とあります。すると信濃→風間神社と解釈する方が現れます。天牟羅雲命は渡会神主の祖神で、伊勢津彦を征討した天日別命は天牟羅雲命の孫にあたります。更に、境内に天牟羅雲社が祀られていますので“伊勢津彦伝説”は夢と消えます。
